鼠径ヘルニア(脱腸)とは

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鼠径ヘルニアとは

鼠径(そけい)ヘルニアは、脱腸とも呼ばれる病気です。脱腸はその名の通り、腸が脱している状態です。腸が飛び出しているということは、腸が正常な位置から動いているともいえます。

「ヘルニア」とは「本来、出るはずのないものが飛び出した状態」のことを指します。椎間板ヘルニアは、腰椎(腰骨)の間にある椎間板が飛び出している状態、おへそが飛び出す、いわゆる出べそは「臍ヘルニア」といいます。

鼠径ヘルニアは、鼠径部に腸などが飛び出す病気です。具体的には睾丸が通ったところから腸が飛び出している状態で、乳幼児や中高年の男性がかかりやすいとされています。

鼠径ヘルニアの種類

鼠径ヘルニアは、外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアと起こる場所から3パターンに分かれます。

初診の際は、どの種類の脱腸かを区別するために、まずは膨らみの起こっている場所の違いを確認します。外鼠径ヘルニアは、男性の場合は陰嚢まで膨らんでいることが多く、押すとへこみます。一方、直接鼠径ヘルニアは、陰嚢まで膨らんでいることは少なく、横になるとへこみます。しかし、症状にも個人差があるため、判断がつきにくい膨らみ方をしている場合もあります。

 

鼠径ヘルニアの先天性・後天性の原因

鼠径ヘルニアは、お腹の中にある臓器を包んでいる腹膜と内臓が、鼠径部の筋肉の弱いところから飛び出します。腸が飛び出す原因は大きく分類すると5つあり、先天性のものと後天性のものに分けられます。

生まれつき鼠径ヘルニアになっているケース

鼠径ヘルニアは、幼少期に先天的に発症するケースが多くみられます。この場合、母体にいる段階ですでに鼠径ヘルニアを抱えています。

加齢とともに鼠径ヘルニアになるケース

加齢とともに筋肉が衰えていき、内臓を支えきれないことが原因となって発症する場合もあります。鼠径ヘルニアが自然に起こる原因として、最も多いのがこのケースだと考えられます。

運動や仕事などの生活習慣から鼠径ヘルニアになるケース

お腹の筋肉が弱ってくると、立ち仕事などをする際に負担がかかってしまい、鼠径ヘルニアの発症リスクが高まります。後天的に鼠径ヘルニアが起こる原因のひとつです。

他の病気が関係して鼠径ヘルニアになるケース

せきをよくする人、喘息の人、慢性的に便秘の人、排尿障害のある人などは、他の原因と併せて鼠径ヘルニアになることがあります。当てはまる方は、鼠径部に違和感があったら注意してください。

妊娠などをきっかけに鼠径ヘルニアになるケース

女性が鼠径ヘルニアになる場合は、妊娠が最も大きな要因だとされています。妊娠すると腹圧が高まるためです。また、妊娠すると鼠径ヘルニアだけでなく、大腿ヘルニアになることも少なくありませんので、注意してください。

日本では年間およそ30万件(そのうち16万件が成人)の手術が行われています。

日本では年間およそ30万件(そのうち16万件が成人)の手術が行われています。全世界では年間に約2,000万人以上の人が鼠径ヘルニアの手術を受けていると言われております(※)。

日本の鼠径ヘルニアの手術の数は年間約30万件行われており、最も件数の多い良性疾患です。しかし、日本には専門の外科医が少ない現状があります。鼠径ヘルニアになっても我慢する方が多くおり、大きなヘルニアになっていても、痛みがないからと受診されない方も多くいらっしゃいます。ちなみに、仙台市の人口は約106万人、山形市の人口は約21万、東北6県の人口は約900万人なので、日本でもどれだけ多くの方が手術をされているかわかりやすいと思います。

また、日本において鼠径ヘルニアは患部の場所のせいか「恥ずかしい病気」だというイメージがあるため、受診をためらっている潜在的な患者様がかなり多いと推測されています。鼠径部に違和感があったら注意深く観察して、少しでも痛みがあったり、膨らみがある場合は早めに受診してください。

男性と女性では、男性の鼠径部の方が鼠径ヘルニアを患う可能性が高いとされています。実際に、成人鼠径ヘルニアの90%近くは成人男性による発症となっています。鼠径ヘルニアは椎間板ヘルニアと同様に、人間が持つ構造的な欠陥から生まれてくる症例です。そのため、人間が二足歩行を続けている以上はなくならない病気と考えられます。

※参考文献
  1. Kingsnorth A, LeBlanc K (2003) Hernias: inguinal and inci- sional. Lancet 362(9395):1561–1571

2. Rutkow IM (2003) Demographic and socioeconomic aspects of hernia repair in the United States in 2003. Surg Clin North Am 83(5):1045–1051

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