鼠径ヘルニア(脱腸)の手術では、合併症をできるだけ起こさないように準備して手術を行う事と、万が一合併症が起こった際に的確な対応を実施するための対策がしっかりできていることが大切です。
当クリニックでは、手術前に患者様に合併症のリスクもしっかりと行い、術前・術後に合併症を引き起こさないように最善の準備をして手術を行っております。
鼠径ヘルニアの合併症
漿液腫(しょうえきしゅ)
手術でヘルニアの原因となる穴(筋肉の隙間)にスペースが残るため、ヘルニアがあったスペースに体液が溜まることがあります。こうして体液が太ももの付け根部分に溜まって、しこりやこぶのようになった状態が漿液腫です。
体液が溜まってしまうと、膨らみができるため、鼠径ヘルニア(脱腸)が治っていないと勘違いされる患者様もいらっしゃいます。発症する時期の目安は、手術当日~2週間程度です。
血腫(けっしゅ)
手術を行った傷の内部で再出血が起きた状態です。手術の時点では、傷から深部まで止血されていることを確認した上で縫合していますが、ごくまれに傷を閉じた内部で再出血が起こることがあります。再出血の状態が軽い場合、腫れは自然に引いていくことが多いです。ただ、再出血がひどい場合は再度傷口を開き止血を行う必要があります。発症する時期の目安は、手術当日~2週間程度です。
感染
細菌感染によって炎症が起きてしまうことがあります。手術で使用する器具は滅菌されたものを用いますが、患者様の皮膚などにも雑菌が存在していますので、感染を引き起こすことがあります。手術前には、抗菌薬を使用して、細菌の影響をできるだけ少なくするように取り組んで感染予防を行います。
それに加えて、当院では感染を起こさないように、ウーンドリトラクターという機具を用いて、創傷感染しないように心がけております。ヘルニア手術の際にこの機具を使っている施設は、全国でも数えるぐらいしかありません。
手術後すぐに発症することもあれば、数週間~数年経って起こる場合もあります。
疼痛(とうつう)
手術後、数日間の痛みはある程度やむを得ませんが、近年では鎮痛薬も種類が増え、効果も高くなってきたので、以前と比べて術後の痛みが楽になってきたようです。
ただし、手術から何週間も経っているのに痛みや違和感がひどい場合は、太ももの付け根(鼠径部)を支配する神経の障害や、手術の際に使用したメッシュの異物感が原因として考えられますので、早めに受診してください。発症する時期の目安は手術後から数週間です。
当クリニックの合併症への取組み
丁寧な手術をこころがけている
術前診断で、患者さんの生活環境や基礎疾患などを把握して、様々な術式の中から患者さんあったテーラーメイドな手術をおこないます。